川の流れに抗うように一本の枝が垂れ下がっておりました。その枝に水が激しく当たり水しぶきが上がります。水しぶきの当たった枝には洋服の襟の様に、垂れ下がった蔓にはイカがぶら下がった様に氷ができておりました。「しぶき氷」は猪苗代湖の波しぶきが当たってできる氷ですが、この氷は一体何氷というのでありましょうか。「あらがい氷」とでもいうのでしょうかネ。
『智に働けば角が立つ。情に棹させば流される』とは草枕の有名な出だしの文章ですが、「川に棹させば、氷ができる」とは何とも非文学的な、しかし、動的な風景ではありますナ。